ゲームをしていても、仕事をしていても、ビジネスの作業をしていても、頭の片隅で同じ声がする。
「今こんなことをしていていいんだろうか?」
最初はゲームへの罪悪感かと思っていた。でも、仕事中にも、ビジネスのことを考えている最中にも出てくる。罪悪感とは違って、近いのは焦りだった。もっと良い選択肢が、もっと充実する何かが、他にあるんじゃないか。
困るのは、目の前のことに没入できなくなることだ。仕事も遊びも、その時点に集中できない。
声に名前がついた
この声の正体をAIに相談してみた。返ってきたのは、こんな仮説だった。
その声は「間違いを警告するアラーム」ではなく、「選択したことを確認したがる監査役」なのかもしれない。「今こんなことをしていていいんだろうか?」の本当の意味は、「本当にそれを選ぶのか?」なのかもしれない、と。
読んだ瞬間、しっくりきた。頭の中に、いつも見張っている監査役がいる感じ。自分の感覚に一番近い言葉だった。
この監査役を、英語で「Watchdog」と呼ぶことにした。直訳すると番犬。危険を察知して、守ろうとして、ときどき吠えすぎる。この声にぴったりだった。
Watchdogは敵じゃない
最初に考えたのは、このWatchdogを黙らせる方法だった。でも話しているうちに、それは違うと思えてきた。
Watchdogは、リスクを見つけて、根拠を確認して、抜けや矛盾を知らせてくれる。重要な判断をするとき、これまで役に立ってきた働きでもある。黙らせられるものでもないし、自分ならではの役に立つ部分だ。
問題は、働く範囲のほうにあった。
いつの間にか、Watchdogが上司になっていた
気づいたのは、自分の感覚を信用していなかったことだった。何かを楽しいと感じても、いちいちWatchdogを引っ張り出して、理屈づけをしようとしていた。ゲームなんて「楽しいかどうか」だけで良さそうなものなのに。
本来の順番は、こうだ。
感覚が方向を示す → Watchdogが確認する → 行動
それが、いつの間にかこうなっていた。
Watchdogが承認する → 感覚が動く → 行動
感覚が何を言っても、「根拠資料を提出してください」と言われる。自分の感覚は、証明待ちの案件になっていた。
そこで、はっとした。Watchdogはとても大切だけど、その上司は自分自身だ。方向を決めるときに一番大事なのは感覚のほうで、その序列は変わらない。Watchdogが見つけてくれた視点も大切にしながら、全部まとめて決めるのは自分だ。
The CEO and the Watchdog(社長と監査役)
この構造を、「The CEO and the Watchdog(社長と監査役)」と呼ぶことにした。上司にあたる自分が「社長(CEO)」、見張る側が「監査役(Watchdog)」だ。どちらも、AIとの会話で出てきた比喩を、自分の実感に合わせて組み直したものだ。
- CEO:方向を決める。「これが好き」「これをやりたい」という感覚で判断する
- Watchdog:リスク、非効率、矛盾を見つけて知らせる。敵ではなく、人生を良くしようとしている管理者
- 分担:Watchdogは、比べられるところまで情報を整える。決めるのはCEO
「感覚を信じるか、理性を信じるか」という対立ではなかった。感覚が目的地を決めて、Watchdogが地図を確認する。それだけの分担だった。
感覚を見直してみたら
役割を戻して観察してみると、感覚は前からずっと働いていた。
- 洗車は、仲間と雑談しながら車をきれいに仕上げて、それがお金になる。これはこれで楽しい
- タクシーで知らない場所に足を伸ばして、お客さんに「ありがとう」と言われるのはうれしい
- WoWは懐かしくて楽しい気もするけど、やっぱり重くて合わない
- 鳴潮は素直に楽しい
感覚は気まぐれな感情ではなく、自分にとっての価値や方向を教えてくれるセンサーだった。ただ、そのデータをちゃんと残してこなかっただけだ。
気づいたら、感覚を確認する習慣がついていた
役割が見えてから、いつの間にか、自分の感覚を確認する習慣がついていた。
変わったのは、ふとした瞬間に、感覚が「違う」と伝えてきていることに気づけるようになったことだ。
たとえばゲーム。楽しくてやっているときもあれば、なんとなく逃避っぽくやっているときもある。後者のときは、「あー、あんまり楽しくないな。惰性でやってるな」と、その感じに気づく。
ゲームで例えたけれど、ほかの場面でも、同じように意識できるようになった。
Watchdogを黙らせたわけではない。そこに、感覚の声を聞く習慣が加わっただけだった。
あなたの中で、いま話しているのは誰?
「今これをしていていいのかな」と思ったとき、それは責める声ではなく、確認したがっているだけのWatchdogかもしれない。
その声が聞こえたら、もう一つだけ聞いてみてほしい。
いま話しているのは、CEOのほうか、Watchdogのほうか。
